テレビ画面を正視することができなかった
がれきと海水の混じり合った津波が、
濁流のように家を、道路を飲み込んでいく
走っている車に波がのしかかる
ああ、だれが乗っているのだ
お父さん?お母さん?兄さん姉さん?
だれかにつながるかけがえのない命がのみこまれていく
爪痕の少しでも小さいことを、ただただ祈る
日本列島はプレートのぶつかり合う上に乗る
その危うさを物理学者の寺田寅彦は
「国土全体が一つのつり橋のうえにのっかているようなもの」とたとえた
夜が明ければ
さらなる被害が確かめられよう
生命、財産、故郷の町並み
失われたものの大きさに打ちのめされるにとたちとの絆を失うまい
こんなときに繋ぐための手が
私たちの心にはある
天声人語より